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みんな同じ愛のむじな その3

「さみ。めがっささみい」

なんでこんな季節にわざわざ、外で食わねばならんのだと不満たらたらながらも、ちゃんと相手をしてくれる中馬は偉い。一重瞼のくせにつぶらな瞳をしていたり、髪はツンツン立てていてかっこいいのに、眉毛はすごく極太だったり、どっちつかずなところとか、いい。

昼休み。いつもは教室で弁当を食べるのだけど、風に当たりたい、とか適当に理由をつけて中馬をベランダに呼び出し、地べたで胡座を掻いている。

内緒の話は、大概ベランダだ。読書してるか、教室で当たり障りない女子グループに遠慮がちに混じって卵焼きやウインナーをパモグしている姉崎さんに、聞かれたくないので。

「で、なんだよけーご。えげつないAVでも入手したのか。ワンワンとか、ヒヒヒーンとかとやっちゃうやつ」

「そんなの一生みない」

「俺はワンワンもヒヒヒーンも、一生みねえとは言い切れねーなー。いずれ平気で見れるようになりそう。みんなみんな、生きているんだ友達なんだ」

「聞いてねえし」

「ひとりごとだよ。んでなんだよ。どうせ、姉崎関連なんだろうけど」

「うん。実は今日」

「映画いくんだよなせせこましく俺の名前使って家族にカモフラージュして」

「告白しようと思ってるんだ」

「うーわあの姉崎に。俺らの妄想の産物に。とんでもない出世だなお前」

中馬は春先、果敢に姉崎さんにアタックして、見事玉砕している。きみがそんなによく喋るのは、自分に自信がないからなの。的確に分析されてズタボロになった中馬は、図星だよこんちくしょうと僕の胸で泣いて、それから主にこのベランダで、生クリームを鼻先につけているのにも気付かず無我夢中でケーキをむしゃむしゃ食べている姉崎、家でひとりになると鏡の前でセクシーポーズをとるのが趣味なのだけど、お母さんに見られてしまってからは自重している姉崎、などと根拠のない妄想をするようになった。楽しかったので僕もやっていた。姉崎さんにバレたらおそらく刃物で刺されてしまうような、卑猥なものもある。

何かしてもらって感謝の意を告げる時に、しゃしゃ、という姉崎。これは妄想ではなく、実際に僕が知りえたことだった。幼い時、姉崎さんは謝々が読めずに、しゃしゃ、と発音してしまい、そしてそれを気に入ってしまったらしい。未だにありがとう、のかわりによく、謝々、を使うのだそうだ、親しい人には。可愛げのない顔をしながら、しゃしゃ、と子供みたいに言う姉崎さんは、とても魅力的だった。中馬には勿体無いから秘密にしている。

「それで目前でびびって未遂に終わってしまう恐れのある意気地無しのけーご君は、頼れるナイスガイの中馬君に背中を押してもらおうと思ったわけだ」

「そういうわけじゃないけど」

まったくその通りだった。週明けの月曜日にどーだったどーだった? と中馬に詮索されるのだと身構えない限り、及び腰になってしまう、と僕は不安なのであります。

「でも普通、映画いくんだったら平日じゃなくて、休日に誘うよなたっぷり他のイベントと組み合わせて。なにお前、馬鹿なの?」ふん、と中馬が笑う。

「そりゃ勿論、明日とか明後日の土日に誘ったよ。でもどっちとも、用事があるから無理だってメールが返ってきちゃったんだから、しょうがない」

「え、ってことは」中馬がざーとらしく、驚いてくれた。「姉崎はけーごの週末の誘いを断ったわけだけど、用事のない金曜日なら大丈夫だよ、って代替案出してきたわけか」

「そうなんだよ。あっちから、誘い返してくれたんだ」

「それってどう考えても、姉崎もけーごに気がある証拠だよな」

「そうなんだよ!」中馬よ、ナイスガイ。

「まあ土日に本命の彼氏と、わいわいお泊りデートですけどねー」

「黙れ」

「はあーあ、いけそうな気がするのがムカつくなあ。キューピッドの俺に感謝しろよ。俺のイメージビデオ返してなかったら、こんな風に姉崎と親密になれてねえんだから」

「じゃああの時、お前のがっついた食事の誘いにのこのこ着いてきて、彼氏から電話がかかってきた、とかってすぐ帰ったあの女の子もキューピッドで、感謝だな」

「神様、けーごが付き合えた瞬間、インポになる魔法にかかりますように」

「姉崎さんと付き合えるんなら、別になったっていいけど」

「プラトニック気取ってんじゃねえよ。女は精神的な繋がりを求める。男は肉体的な繋がりを求める。これって自然の摂理なんだろ。俺だったら勃たなくなった瞬間、女の両足掴んでハンマー投げみたいにしてぶん投げるけどな。だってならただ金かかるだけじゃん」

「聞いてねえし」

「ひとりごとだよ。ま、とにかくけーごの、今夜の健闘を祈ってるよ」

予鈴のチャイムが鳴り、中馬が購買のクリームパンを大口あけて、あんむと放り込む。

「ありがとう。健闘するよ」

「お前らの営みを想像して、オナニーでもすんべ」

「してろ」

僕は母親の手作りの、醤油ダシのよく染みたそぼろご飯を完食した。今日も美味しかった。仕事あるのに早起きでありがとう。ご馳走さまでした。

これが僕が食べた最後の、母親の手料理となる。




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みんな同じ愛のむじな
いろいろありましてパイロット版を公開いたします。 ひまでひまでなにもやることなくて読書をしたいがお金もなくて でもプリントアウト用のA4用紙だけ腐るほど余って困っている人におすすめ 2011年6月3日 0:59
じこしょうかい

木堂椎

Author:木堂椎
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